象牙質内の虫歯の進行と痛み July 2010


今回は象牙質内の虫歯の進行とそれにともなう痛みについて書かせていただきます。ご存じのように歯の表面はとても堅いエナメル質で、その中にもっと柔らかい象牙質があり、そしてその中に歯髄があります。エナメル質に虫歯が止まっていれば痛みはまずありません。また、その逆に歯髄には神経と血管とが入っているのでそこまで虫歯が達してしまうと非常に大きな痛みが来ます。しかし、象牙質内は違います。

エナメル質内では虫歯の作った酸が歯を溶かしていくだけなのですが象牙質ではそれ以上の事が起こっています。象牙質内には歯髄から歯の表面に向かってたくさんの穴が広がっています。象牙細管と呼ばれこの穴は歯髄に近ければ近い程大きく、エナメル質に近い程小さくなります。この穴は電子顕微鏡でしか見えないのですが、この穴があるため象牙質に虫歯が達してしまうとすぐその後に歯髄にも異変が感じられ、しみる,痛いという事が起こります。しかしそのままという事ではなく、歯髄はこの異変に対応しようとし、他の炎症物質といっしょにマトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix Metalloproteinase (MMP))という酵素をそこに送ります。この酵素にはコラーゲンやタンパク質などを分解する働きがあり、つまりまずバイ菌を退治するために送られます。しかし、バイ菌を完全に退治する事は出来ず、実際は自分自身の象牙質を破壊してしまうのです。えっ!と思われるかも知れませんが、この働きは体が自分に害があるものから離れようとするためとも考えられます。結果として、象牙質はまずエナメル質よりやわらかいので虫歯の進行は早いのに加え、このMMPがもっと象牙質を分解してしまうのです。

しかも象牙質が破壊される際に起こり得る事があるのですが、この破壊された近辺の象牙細管の穴は破壊されて出来たカルシウムやリンによって埋まってくれるのです。そしてつまり穴が埋まる事により痛みを感じなくなるわけです。同時に歯髄は他の炎症物質を象牙質内に送り、象牙細管を細くしようとします。また、歯髄は微量なのですが象牙質を作る事が出来、ちょうど歯髄と最初からある象牙質の間に新しい象牙質を作る事さえもします。つまり、虫歯と象牙細管で繋がっている位置にある歯髄は、そこよりも遠ざかるように新しい象牙質のバリヤーを歯髄内に作り歯髄を縮めていくのです。つまり、象牙質に虫歯が達してしまった場合、歯髄は出来るだけ痛みを感じさせないようにしようとしてくれるのです。良く言えば、私たちの歯は虫歯で犯されていても出来るだけ痛みのない普通の生活が出来るようにしてくれているのですが、悪く言えば、痛みを感じないまま象牙質内ではどんどん虫歯が広がってしまうのです。

また、治療にも歯髄と象牙細管は関係してきます。歯髄に虫歯が入ってしまっていたり、またあまりにも歯髄を犯している場合には、歯髄を取り除く根管治療というものが必要になってしまいます。また、歯に詰め物を付着させる技術はとても良くなっているのですが、一番強く付着できるのがエナメル質でそこからは象牙質内では歯髄に近い程、付着する力が弱くなります。これは象牙細管の穴が歯髄に近くなればなる程大きくなるからです。しかも、やはり虫歯が大きければ大きい程、治療の時間も費用も増してしまいます。ですから、“痛くないから大丈夫”ではないので、出来るのであれば虫歯は出来てしまったら早めに治してください。もちろん、予防が一番大事ですので、毎日の歯磨きとフロスそして定期的な〈通常6カ月ごと〉歯医者さんでの検診と歯と歯茎のクリーニングは特にお勧めします。治療、検診、クリーニングのためにはお電話下さい。

 

 

 

 

 
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