フロスか死か December 2010 え?何という題なんだと思われるかも知れませんが、この標語には一理あります。英語では ”Floss or Die” と言い、もう10年ぐらい前にある歯科医師が学会で使った言葉で、それ以来知る人ぞ知る標語となっています。そして最近ではいろいろな健康に関する書物にも健康管理のためには毎日フロスをしなさいと書かれています。 “フロスか死か”という言葉は歯槽膿漏の予防のために使われていて、これは歯槽膿漏が全身疾患のリスクを高める大きな要素だからです。歯槽膿漏は心臓病、脳卒中、肺炎、糖尿病などになってしまう可能性を非常に高めます。歯槽膿漏とは歯と歯茎の間に歯垢が入り込み細菌が住みこんでしまい起こるもので、その際歯茎と歯周骨にダメージが起こります。それと共に細菌、細菌の出す毒物、そしてここでおきている炎症のために体が作っている炎症物質が血管を通じて体中に回ります。つまり、歯槽膿漏を長い間患っていたり歯槽膿漏が悪化していたりすると、それなりに体中に病気の元になるいろいろなものが循環している事になります。この事が体をいろいろな重大な病気にしやすくするのです。従って、フロスをしなければ死に至るという言葉には一理あります。もちろん大げさに言っているわけですが、体の健康のためには口内が健康である事がとても大事なのは確かです。 歯と歯の間を掃除するためには歯間ブラシと言うものもありますし、またウォーターピックというものもあります。フロスと共に使って良いですし、またどうもフロスでは届かず掃除が出来ないという所にも使って下さい。私はみなさんに1日2回は歯を磨き、1回はフロスをして下さいと伝えていますが、これは最低限にはですので、3回磨いて3回フロスをすればもっと良いです。また、歯医者での定期的なクリーニングも是非して下さい。 フロスは歯を磨く前にしても後にしてもかまわないのですが、私自身は歯磨きの前にしています。また、太めだったり、細かったり、味がついていたりといろいろな種類がありますが、どれでないといけないというよりもフロスをする事の方が大事なので自分で良いと思われましたらそれを使って下さい。また、フロスをする際、歯と歯の間に入れましたら歯と歯茎の間にも入る所まで入れて下さい。押し込むのでは無く、軽く入れてもずいぶん入ります。こんなに入れて良いのかなと思われるかもしれませんが、それであっています。そして、歯と歯の間ですからここには歯と歯茎の間は両側にあるので、歯の片面にまず縦に滑らして歯と歯茎の間にも入れ、そして縦に出すようにして今度は縦にもう一方の面に滑らしもう一方の歯と歯茎の間にも入れ、そしてフロスをそこからは取り出すという風にして下さい。歯茎がある程度炎症を起こしていればフロスの際に歯茎から多少血が出ますが、これにはかまわずフロスを毎日続けて下さい。フロスをすると歯と歯の間に隙間が出来るのではないかと聞かれる患者さんがおられますが、これはありません。確かにフロスを強く歯と歯茎の間に押し込む事をいつも続けていれば歯茎にダメージはあり得ますが、普通のフロスの仕方では利点ばかりで、欠点はありません。 虫歯も歯槽膿漏も治療は可能ですが、悪化していればしているほどやはり治療も簡単ではなくなります。あまりにも悪化していれば歯は抜くしかないという事になってしまいます。しかも歯槽膿漏は全身疾患のリスクを高めます。ですから、歯と歯茎のため、そして体の健康のためにも歯磨きとフロスを良くして下さい。
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