歯磨きとフロスの心理 March 2011


皆さんも御存知のとおり健康のために予防はとても大事です。そして歯と歯茎のためには毎日の歯磨きとフロスは欠かせません。しかし、良く手入れをする方、ある程度する方、そして少ししかしない方とどうしても歯の手入れをする程度は人それぞれ違ってしまいます。長い目で見ると口内だけでなく体全体の健康に良い事なので、歯磨きとフロスは毎日きちんとしていただきたいところです。おもしろい事にどうすれば人に歯磨きとフロスをもっとするように誘導できるかを調べた実験が2つあります。今回はあまり良く歯と歯茎の手入れをしていなかった方が一人でも歯磨きとフロスを良くしようと思ってくれる事を願い、この2つの実験を紹介します。

まず、1981年にコネチカットで行われた実験があります。この実験では学生たちを半分に分け、両方のグループにだいたい15分ぐらいの講義をしました。1つのグループには歯磨きとフロスを毎日きちんとしなければ、虫歯や歯槽膿漏になってしまい良くないのだが、なってしまったら治す事は出来ると講義しました。もう1つのグループには歯磨きとフロスをしなければ、虫歯や歯槽膿漏になってしまい、放っておくと歯は非常に痛くなり、食べ物は良く噛めなくなり、そして治すのもとても大変だと講義をし、ひどい虫歯、そして膿と血だらけの悪化した歯茎のスライドを見せました。そして、講義の前に全員がどれだけ歯磨きとフロスをしているかを調査し、この講義後、どれだけフロスを前よりもするようになったかを調査しました。この際、講義の前にもうひとつ質問を皆にしていて、それは歯磨きとフロスの仕方を教えますが、あなたはこれから毎日きちんと歯磨きとフロスをする事を出来ると思いますかというものでした。答えは、きっと出来るだろうとたぶん出来ないだろうとの2つに分けてありました。調査の結果はとても簡単で、どちらの講義を受けた人も毎日きちんと歯磨きとフロスはきっと出来るだろうと答えた人はもっとフロスをするようになり、どちらの講義をうけた人も毎日きちんと歯磨きとフロスは出来ないだろうと答えた人はフロスをする量を変えなかったのです。つまり、良い行動をとらなければ、こんなに怖い事になってしまうとおどす事にはメリットが無く、大事なのは教育だったのです。そして、個々の人が自分は出来ると信じていればその行動は出来うるし、出来ないと信じていればその行動はしないという事でした。従って、みなさんも自分は歯磨きとフロスを毎日きちんと出来ると信じてください。

もうひとつの実験はカンザスシティで行われ2002年に結果が発表されました。ホーソン効果と言うものを活用した実験で、ホーソン効果とは誰かが関心を持って見ていると、見られている人の行動は影響を受けるという効果です。(Hawthorne Worksという工場でまず行われた実験からこの名前がついています。)この実験ではある歯科大で歯科矯正をされている患者さんの中から、13~19歳の若者で矯正をしているが歯磨きをあまり良くしていない人40名をわざと選びました。この中の20人にはなにも特別なことはしませんでした。しかし、あとの20人には新しい歯磨き粉の効果を知るための実証試験があるのだがそれに参加していただけないかと聞き許可を得ました。そしてこの20人に皆番号だけがつけられているチューブの中に歯磨き粉を入れ渡したのです。皆実際は普通に市販されている同じ歯磨き粉を与えられたのですが、この20人には半分の人には普通の歯磨き粉が与えられ半分には特別な新しい歯磨き粉が与えられたと伝えられました。しかも、皆に毎日朝晩と2分間ずつこの歯磨き粉を使って磨いて下さいと伝えたのです。そして、この20人には3ヶ月後と6ヶ月後に歯磨き粉の効果を視るため歯と歯茎の状態をチェックしますと伝えました。実際この歯科大では患者さんが矯正をしていれば3ヶ月ごとには歯と歯茎のチェックをしているので、先に言った何も特別な指示を受けなかった20人も同じに3ヶ月と6カ月の時に歯と歯茎のチェックを受けました。結果はもう予想がつくかと思いますが、この歯磨き粉の実験に参加していたと思っていた20人の口内の歯垢のたまり具合、また歯茎の状態はただ矯正をしていた20人の口内よりも3ヵ月後も6ヶ月後もとても良かったのです。つまり、関心を持って見ているとひとの行動はそれに合わせて変わるという効果を使って患者さんが歯磨きを前よりも良くするという結果を出したわけです。しかし、この実験はどうも回りくどく患者さんに対して偽りがあって、実際に通常の生活に応用出来るかはむずかしいところです。ですが、大事なのは、関心を持って見ているという行動なので、家庭内でも応用できる可能性があります。小さいお子さんが歯を磨いた後、良く磨けているかをお母さんかお父さんが毎日口の中を見てチェックしているご家庭も多いかと思いますが、これにはこの心理効果もあり、とても良いことです。また、もうひとつ大事なのは、この実験では歯を良く磨かなかったひとがあるきっかけからただやってみるかと考えただけで前よりもずいぶん歯磨きを良く出来たということです。

歯医者をしていて私は歯の手入れを良くされている方、またやはりある程度しかしていない方、そしてずっと歯の手入れはあまりしていなかったがある時から良くしだすようになったという方にもお会いします。皆さん、きちんとした毎日の歯磨きとフロスは出来ると思えば出来てしまうと考え良く歯の手入れをして下さい。基礎として1日に2回は歯磨きをし、1日に1回はフロスをして下さい。そして、やはり定期的な歯医者さんでの検診とクリーニングもして下さい。虫歯も歯槽膿漏も放っておいてはいけませんから治そうと思いましたらご連絡下さい。

 

 

 

 

 
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