骨をたす技術   January 2015

あけましておめでとうございます。日本には元旦と6月1日にかたい食物を食べて歯の根を固めて一年中健康である事を願う"歯固め"という行事があります。歯には"齢"の意味もあり、長寿を願う行事でもあります。中国でもこの風習が古くからあり、日本では平安時代から天皇家にこの風習があり、地方にもいろいろな形でこの風習が存在しています。食物には鏡餅、押しアユ、イノシシの肉などが使われています。私自身はこんな風習があるとはつい最近まで知らなかったのですが、歯が健康や長寿に大事な事は昔から考えられていた事なのをうれしく思います。もちろん歯は本当に大事ですから、今年もこれからもとても大切にして下さい。

ところで、歯が頑丈であるためには歯を支えている骨が頑丈で多くある必要性があります。歯を歯槽膿漏で失ってしまう場合、周りの骨が歯槽膿漏で無くなってしまい歯の支えが無くなり歯が抜けてしまいます。また、虫歯がひどくて歯を抜くしか治療法が無い場合、歯を抜いた後は骨はそのままにしておくと抜いた穴のところへ縮小していきます。そして顎骨は歯なりインプラントなりが入っていないと骨がある必要性が無いと考え自ら縮小していく事をします。この縮小は長い年月をかけて起こるので、総入れ歯をしている方は何年もしてから、入れ歯がゆるくなると言うことを経験します。もちろん歯を失うようになる以前に出来るだけ早期に歯槽膿漏や虫歯は治しておきたいところですが、歯を失った場合には、顎骨を保つためにもインプラントはお勧めです。しかしインプラントをするにしてもそこにたくさん良い骨が無ければ出来ません。そこで、今回は骨が無くなってしまったところにある程度までは出来る骨をたす技術について書きます。

顎に骨をたす技術には幹細胞がかかわっています。いろいろな意味で話題になり、またこれから医療での使用が発達していくものが幹細胞(Stem Cell)です。簡単に言えば、いろいろな細胞のもとになる細胞で、実際はまだまだ普通に使われているというよりも、未来に役にたっていくだろうというものです。しかし幹細胞についてはすいぶん解っている事もあります。ご存知かもしれませんが、私たちの体はいつも新しい骨を作り、古い骨と変えていくという事をしています。この仕組みのおかげで骨は折れても治りますし、子供が成長する際、骨も大きくなる事ができます。そして、5年から10年ぐらいで私たちの体内の骨はすべて新しい骨と入れ替わります。この作業をうまく使うことが出来れば、顎骨が無くなってしまったところでも骨をたすことができます。限度があるのですが、ある程度はこれが可能になっています。骨が無いところに特別な骨の移植物質を入れてあげて形を整えておき、その物質と自分の新しく作る骨が入れ替わるということが今現在行われています。この骨移植物質が特別である必要性があるのですが、今の医学ではいろいろな良いものが出来上がっています。人工のものと牛の骨を特別に加工して粉末状にしたものが主流です。牛の骨といっても殺菌はもちろんしてあり、しかも生物化学的には生物としての有機物も取り除いてあり、とても安全なものです。そして、骨を作る細胞はそうなる前には幹細胞なのですが、今は幹細胞をひきつける特別なたんぱく質の存在が知られていて、しかもこのたんぱく質を作る事も可能になっています。幹細胞というと何か特別なもののようですが、私たちの体には幹細胞は普通に存在しています。従って、この特別なたんぱく質の液体を骨移植物質と混ぜて骨が無くなってしまったところに入れてあげるとそこに体に存在する幹細胞が引き付けられ、骨を作る細胞になり、骨移植物質は破壊されそれと入れ替わり自分の骨になるということがおこるのです。私自身は医学の発展はすごいと感心していますが、ただこの作業には限度があります。歯を抜いたところに穴があってそこにこの物質を入れた場合は周りに良い骨そして血液そしていろいろな細胞が存在しているので新しい骨が出来上がっていきますが、ただ平たい骨の上にこの物質をのせてもこの物質はのっかてるだけで何も起こりません。つまり使える場合と使えない場合、またある程度は骨をたせる場合といろいろなケースがあるので、過剰な期待はしてはいけません。また、歯槽膿漏で歯周骨を無くしてしまったからそこにこの方法で歯の周りに骨をたしてあげるということにも制限があります。歯は骨とそのまま繋がっているのではなく歯と骨の間には特別な細胞が存在しています。しかし、この細胞は今のところ再現できません。従って、まだまだ出来ない事も多いのですが、骨をたす技術はとても発展していることも事実です。

歯科学というか医学はとても発展していますし、未来にはもっといろいろな発展が見られると思います。でもだからと言って歯と歯茎の手入れを怠らないで下さい。骨をたす技術やインプラントはとても良いものですが、本物の歯、そしてそれを支えている骨はやはりすごく良く出来ています。みなさん本当に自分の歯と歯茎そしてもちろん体を大切にしてください。毎日の歯磨きとフロス、また定期的な歯医者さんでの検診とクリーニングを強くお勧めします。 もちろん、歯と歯茎の治療が必要であれば、また、検診とクリーニングのためにはお電話下さい。

 

 

 

 

 
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