運と虫歯 October 2016

虫歯が出来るか出来ないかは公平には起こりません。人によっては歯を全然磨かなくても虫歯にならないですし、人によっては歯を良く磨いているのに簡単に虫歯になってしまう方もいます。またどんなに甘いお菓子をだらだら食べていても虫歯になり難い方と少ししか甘いものを食べないのにすぐに虫歯が出来てしまう方がいます。えー!と思われる方もおられるかもしれません。この歯科便りをいつも読んでいる方、もしくはそうでなくても虫歯の事を良く知っている方は当然だと思われるかもしれません。簡単にこれは運が良いか悪いかの違いだと言ってしまっても良いのですが、この違いについて今回は書きます。

たまに歯が弱いから虫歯が多い、または歯が強いから虫歯が出来ないと患者さんが言われる事があります。もちろん違いはあります。フッ化物は歯を硬くします。従って、もし子供の歯が出来あがって来ている時にフッ素を摂取していると、歯は中から硬くなり、つまり穴があきにくくなります。つまり住んでいる所の飲み水にフッ素が入っていて、その水を子供の時に飲んでいた場合、それをしていなかった子供に比べ、歯は硬くなります。ただ適量でないといけないので、このフッ素の摂取量のコントロールが難しいものです。普通に歯磨き粉に入っているフッ素、また歯医者さんで塗るフッ素もやはり歯を硬くしてくれます。しかし両方とも歯の表面に塗るものなので、歯の表面のみを硬くします。つまり、虫歯がこの表面を通り越してしまうと、中のほうでは虫歯は普通に進行してしまいます。従って、歯磨き粉内のフッ素と歯医者さんで塗るフッ素は助けになりますが、それだけに頼ってしまってはいけません。毎日の歯磨きとフロスで歯の表面から歯垢を取り除く事がやはり一番大事なのです。もちろん、フッ素だけでなく、子供の時に歯を作ることに欠かせない栄養素を良く摂っている事も大事です。しかし、他には特別な歯の質を変える病気以外には歯の硬さを変えるものはありません。

確かに歯の強さ、つまり硬さは関係しますが、それ以外に起こっている事があります。前にも何回か書いていますが、口内にどういうバイ菌がどれだけ住んでいるかによって、大きく虫歯になりやすいか否かが決まります。当たり前のことなのですが、虫歯にするバイ菌が口内に住んでいなければ、歯は虫歯になりません。そして、人それぞれで、口内に虫歯の素のバイ菌が全然いない人、多少いる人、たくさんいる人がおられます。これはバイ菌の種類の比率で全部の口内のバイ菌の数ではありません。私たちの口内には生まれた時にはバイ菌はいないのですが、生まれた後に他の人の唾液から口内にバイ菌がうつり、それがある地点で定住するようになるのです。つまり、赤ちゃんの時にどういうバイ菌がどれだけの比率で口内に住み着くかが決まるのです。そして、一番赤ちゃんの口内にバイ菌をうつす可能性が高いのがお母さんです。しかし子育てをしている最中に親としては自分の口内のバイ菌の量まで気にしている余裕は少なくなります。そこで、私は親になる前から虫歯があれば治し、そして出来る限り毎日歯磨きとフロスを良くする習慣をつけ、歯医者さんでの定期的な検診とクリーニングもすることを特にお勧めします。

ただお母さんだけから赤ちゃんの口内に虫歯菌がうつるのではありません。つい最近あるアメリカの歯科大での研究結果が発表されました。ミュータンス菌は虫歯菌としてよく知られています。そして現在は唾液また歯垢の中のバイ菌のDNAを診てどの種類のバイ菌が居るかを詳しく調べる事が出来ます。ミュータンス菌といってもその中で違う種類のものがいろいろあり、それもDNAを診る事によってわかります。そこで、この方法でいくつかの家族の人たちの口内のバイ菌の種類を調べたのです。この研究では子供の60%はお母さんの口内と同じ種類のミュータンス菌を持っていました。でも、ということは40%の子はそうでは無かったという事なのです。しかも兄弟でもその中の22%の人たちは同じ種類のミュータンス菌を口内に持っていましたが、他の子たちはそうでは無かったのです。つまり、お母さんからうつる可能性は高いけれども、他の人たちからもうつるし、また家族内でもみな同じバイ菌たちを口内に持っているわけではないということになります。しかも一人ごとに一つの種類のミュータンス菌のみでなく、他の種類のミュータンス菌も発見されました。従って、ミュータンス菌だけでも赤ちゃんが接触した誰からでも口内にうつり得るわけで、一人の人からだけうつるのでもないのです。

もちろん理想的には赤ちゃんと接する人全ての人の口内に虫歯菌が無いか少ないかであると良いのですが、それは現実的ではありません。しかも赤ちゃんにとって誰かと接触があるということは精神的にとても大事です。従って、赤ちゃんの口内にどういうバイ菌が定住するかは解りずらく、運がかかわってきます。子供の成長のある地点(2歳7か月あたり)で口内のバイ菌の種類は落ち着くのですが、それまでに接触する誰からでも感染はあり得ます。つまり、運が良ければ、子供は虫歯菌を少し、または全然持たなくなりますし、逆に運が悪ければ口内に虫歯菌をたくさん持つことになります。もちろんひとつの研究の結果だけからの数値ですが、確かに今までの患者さんを診ての経験からしても、お母さんに虫歯が多いとお子さんも多い場合があり、しかし絶対ではなく、また兄弟姉妹でも食事や歯磨き以外に差があることも診ます。

おいおい、なんと不公平なんだと思われるかもしれません。しかし、人生は皆に公平では無いということはだいたいの人はご存知だと思います。生まれた場所、時代、育った環境、そして一人一人の個性というものは皆の人が違います。自分に与えられた体も自分だけの特別な存在です。その中で自分の口内に与えられているバイ菌とも良くも悪くもそれと共に生きていく必要性があります。もちろん、虫歯のバイ菌が口内に多い方でもその分口内の手入れを毎日頑張ってしていれば、それだけ虫歯になりにくくなります。また、虫歯にならないからと言っても、もしかするとその人の口内には歯槽膿漏の素のバイ菌がたくさんいるかもしれません。従って、単に虫歯にならないから歯を磨かないと思っている人は後にそのせいで歯槽膿漏で歯を失くしてしまい後悔するかもしれません。いろいろ考えて、みなさん自分の歯と歯茎を大事にしてください。毎日良く歯磨きとフロスをし、定期的な歯医者さんでの検診とクリーニングもしてください。診察、クリーニング、そして治療のためにはお電話下さい。

 

 

 

 

 
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