バクテリアと共存する April 2018

子供の時、H.G.ウェルズの　"宇宙戦争"　を読みました。一応、日本語で読んだ記憶があります。有名なSF小説ですので、気にせずネタバレをしますが、この話の中では火星人が地球を襲い、火星人のほうが技術が進んでいて、地球人はどんどんやっつけられてしまいます。しかし、最終的に火星人には地球上のバクテリアに免疫力が無く、そのため全滅してしまいます。もちろん、この話はサイエンスフィクションですが、実際に私たちはバクテリアと共存しています。大事なことはバクテリアと、そして他の微生物たちと、上手に共に生きていく事なのです。みなさんもご存知だと思いますが、腸内の良いバクテリアは私たちの健康にとても貢献しています。もちろん、口内は腸とは違いますが、口内のバクテリアについて今回は共に生きていくという観点から書きます。

口内にはバクテリアがたくさんいます。本当にどれだけ住んでいるかは個人差があり、はっきりとは数えられませんが、大体はわかっています。歯を良く磨く人で１０００億から２０００億個、あまり歯を磨かない人では４０００億から６０００億個、そしてほとんど歯を磨かない人であれば１兆個ぐらい住んでいます。そして口内のバクテリアの種類は人によって３００から７００ぐらいいます。ちなみに今現在地球上の全人口はだいたい７６億人です。つまり、口内のバクテリアの数はとてつもなく多いのです。人間たちだけでもいろいろな国を作り、いろいろな人種と文化があり、お互いに助け合ったり戦ったりしています。口内のバクテリアたちも違う種類のものたちが助け合ったり戦ったり領域を作ったりしています。そして、人それぞれの口内に違う比率でいろいろなバクテリアが住んでいます。もちろん、私たちが口に入れる食物がバクテリアの餌なので、食物の種類によってあるバクテリアは良く繁殖しあるものはあまり繁殖しないという事も起こります。従って、虫歯菌の好物の糖分は虫歯菌を増やします。また、歯磨きをどれだけ良くしているかもバクテリアの量だけでなく、歯についているバクテリアの種類にも関係します。バクテリアがきれいな歯にくっついていく際、どのバクテリアが先につく事が出来、次にどのバクテリアがそこにつく事が出来るという順序があるからです。

そしてバクテリアはすごい速さで繁殖します。バクテリアの種類によって速度は違いますが、速いものは２０分で２倍になります。全体図としては、唾液内にもバクテリアはたくさんいて、そこからデータを検出すると実際は５時間ぐらいで２倍になると考えられます。もちろん、唾液は飲みこまれていきますし、歯は普通毎日磨かれます。従って、口内がバクテリアでいっぱいになるわけではありません。しかし、この繁殖のスピードを考えると必ず毎日歯を良く磨く必要性があります。

もちろん、このバクテリアの全てが虫歯と歯槽膿漏の素のばい菌ではありません。害のないばい菌はたくさんいます。口内に害のないばい菌が多く、そして害のあるばい菌が少なければ問題はおこりにくいのです。しかし、ばい菌の口内の種類は赤ちゃんの時にどのばい菌が口内に住み着くかによってだいたい決まってしまいます。従って、歯を良く磨いているのにすぐ虫歯になってしまう方と歯を全然磨かないのに虫歯が出来ない方とが存在するのです。不公平なのですが、実際は大体の方は極端に虫歯がどんどん出来るか、または全然無いというよりもどこかその間に居ます。しかも虫歯菌が無い方でも歯槽膿漏のばい菌を持っている可能性があります。従って歯磨きをしないでいいのだという油断はいつか歯槽膿漏で歯を失くしてしまう事になってしまうかもしれません。

本当に、基本的に、口内の健康に一番大事なのは毎日の歯磨きとフロスです。バクテリアの量と繁殖の速さを考えると毎日出来るだけ歯の表面から取り除く事が大事だし必要だとわかります。前にも書いていますが、バクテリアは粘々したものを作り、それを歯にくっつけ、そしてこの粘々したバイオフィルムの中に住み着きます。この粘々したものは物理的に歯ブラシとフロスを使ってでないと取り除けません。また、いろいろな殺菌用の濯ぐ液体のリンスはありますが、これらのものは粘々したバイオフィルム内に浸透しません。従って、必ず、歯磨きとフロスをしてバイオフィルムを壊してからリンスで濯ぐようにしてください。

私たち誰もの体内に、そして口内に、バクテリアはたくさんいて、本当にいつも共に生きています。この事を認識して、毎日歯磨きとフロスを良くしてください。歯医者さんでの定期的な検診とクリーニングもして下さい。もちろん、検診、クリーニング、そして治療のためにはお電話下さい。