歯周病を油断するな! August 2018 つい最近アメリカの歯科誌 The Journal of the American Dental Association に掲載されたある調査結果があります。アメリカ全州に住む中の1万人以上のいろいろな人たちが歯周病を持っているかどうかの検査を2009年から2014年の6年間各地で口内検査をおこない、その数値をまとめたものです。これによると、アメリカでは全体的に30歳以上の方は42%は歯周病になっているという結果が出ました。日本にも似たデータがあります。2014年の厚生労働省の調査による歯周病の有病率は30代から50代の方々は80%となっています。この数値にはしかし歯肉炎という歯周病の初期の状態もいれてあり、しかもよく読んでみるとこれは推定値であるとも書いてあります。アメリカの最近のデータはもっと進んだ歯周病の歯周炎のみの数値です。しかし、ギネスブックにも全世界で最も患者が多い病気は歯周病だとされています。私は The Journal of the American Dental Association の記事を読んで、まずはまあそんなもんだろうなあ~と普通に当然のように思ったのですが、よく考えると数が多すぎます。日本の数値は実際は推定値であるので、はっきりしませんが、それでもアメリカのデータに数は近いかそれを上回っている可能性が高いです。そこで、今回は歯周病の予防と治療について復習します。 歯周病は簡単には歯茎と歯の間にばい菌が住み込み、歯茎が侵されて歯茎と歯の繋がりがなくなり、骨も無くなってしまう病気です。放っておけば骨があまりにも溶けてなくなり、歯が抜けてしまいます。しかし大部分歯周病には痛みがありません。歯茎から血が出る、口臭がするという事を自覚する事ができる場合がありますが、だいたいの方はあまり気にしないという事が多いものです。しかも普通は徐々に年月をたてて悪くしていくので、歯周病で歯を失くすのは歳をとってからです。つまり、長い間歯周病だった人が50歳ぐらいから急激に歯を失くしてしまうというパターンが多くあります。 しかも、歯周病は体の他のいろいろな箇所に悪影響を及ぼします。歯周病は放っておくと慢性的に歯茎を炎症させ、この炎症物質と歯周病のばい菌は血流を通して体中にいきわたります。この事は簡単に心筋梗塞や脳卒中などをおこしやすくします。また、血糖値のコントロールもこの炎症物質とばい菌のせいでとても難しくなります。他のいろいろな病気にも関係しています。従って、歯周病は痛くないからと言って放っておいてはいけない病気です。 予防はとても簡単なのです。悪いばい菌が歯と歯茎の間に住んでいなければ、または出来るだけ少ししかいなければ良いのです。従って、毎日良く歯を磨き、フロスをする事がとても大事なのです。ばい菌はいつもいつも歯についていき、繁殖していきます。それを毎日取り除いていれば良いのです。歯医者でのクリーニングも普通には6か月ごとにはしていればとれていなかった歯垢や歯石もとれ、良い予防になります。 そして治療もやはり簡単な事なのです。歯と歯茎の間をきれいにすれば良いのです。従って、歯周病が悪ければ、麻酔をして歯と歯茎の間を深くまで掃除をするという事をする必要性が出てくるのです。ただ、歯周病で侵されてなくなってしまった歯と歯茎の間を繋げていた繊維や歯周骨はもとには戻りません。一応、少しは繋げたり骨をたしたり出来るのですが、大部分はダメージを止めてそれ以上歯周病が進まないようにする事が治療です。しかも、一度歯周病になってしまった歯茎は弱まっていてまた歯周病になりやすくなります。従って、普通には歯医者でのクリーニングは6か月ごとをお勧めですが、歯周病に一度なってしまった方には3か月ごとをお勧めします。 本当に当たり前の事なのですが、一回ごとの歯磨きとフロスは出来るだけ入念にするべきなのです。ちょこっとして終わりにしてしまうとばい菌のバイオフィルムがたくさん残ってしまい、しかもこのばい菌たちはすごい速さで繁殖します。また、歯医者でのクリーニングもきちんとした入念なものであるべきなのです。私は昔から私自身が患者さんの歯のクリーニングをしていますが、たまに初めての患者さんにこんなに丁寧なクリーニングをされた事がないと言われる事があります。しかし、そうでないとせっかくの歯医者でのクリーニングの意味がありません。自分ででもプロのクリーニングでも常にばい菌バイオフィルムは出来るだけ全てに近く取り除く必要性があります。みなさん、歯と歯茎を大事にして下さい。もちろん、定期検診、クリーニング、そして治療のためにはお電話下さい。体の健康と長寿を守るために "歯周病を油断するな!"と言わせていただきます。
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