心臓麻痺と脳梗塞 February 2019

口内の健康は心臓麻痺、そして脳梗塞に関係します。これは炎症物質とバクテリアは体のどこに問題を起こしてもそこから血流に入り、体全体に回り、体の至る所で血管を傷めるからです。以前書いた　"歯周病と粥状動脈硬化 May 2017"　でこの事についてふれているので、よろしければ当医院のホームページ上でこの記事をお読みください。しかし、良く解らないと思われるかもしれません。でも、死にまで至る病の事なので、今回は少し詳しく口内の健康と心臓麻痺と脳梗塞の関係について書きます。

心臓麻痺（心筋梗塞）も脳梗塞もその箇所の動脈が閉ざされて起こります。つまり、動脈硬化によって血管が狭くなったり、また血栓が流れて来て血管をふさいでしまって起こるのです。（一応、脳卒中は血管が閉ざされる脳梗塞ともう一つ血管が破れる脳出血でも起こります。ここでは脳梗塞と心筋梗塞についてのみ書きます。）血管が狭くなる動脈硬化は動脈壁の中に脂肪性沈着物が付着して起こり、また血栓が血管をふさいでしまう事はこの動脈硬化が起こってしまっている箇所がある時に割れてしまうと血の固まりが出来て血管の中に流れていきどこかで詰まってしまうと起きます。そしてこの動脈硬化は血流の中に炎症物質があるととても起こりやすくなります。血流の中に血管に害を与える事の出来るバクテリアが多く居ればもっとこのダメージを起こしやすくします。従って、口内で歯茎に起こる歯槽膿漏、そして歯の根の先が化膿して出来る歯根嚢胞（しこんのうほう）は口内だけの問題と考えてはいけないのです。両方とも炎症物質とバクテリアを血管に流しこみます。

しかも歯槽膿漏と歯根嚢胞には痛みが無い事が多いのです。もちろん痛い時もあります。しかし長い間痛みが無い事が多いので、放っておく事が簡単に出来てしまい、この事は長い間炎症物質と悪いバクテリアを血管内に流してしまう事をします。歯槽膿漏による歯茎の炎症が多いほど脳に繋がる頸動脈の炎症も多い事が今は知られています。また、ある研究では心臓麻痺を起こしてしまった方の心臓の冠状動脈の血栓内のバクテリアのDNAの量を調べたところ、普通の16倍に歯槽膿漏と歯根嚢胞のバクテリアが存在していたという結果が出ています。また、他の研究では心臓麻痺を起こしてしまった方30人の口内のレントゲンとCT Scanを撮って検査したところ、半分の方は歯根嚢胞を患っていた事が判明されています。当然と言えば当然なのですが、体のどこかが化膿して炎症していればそこからは血流を通して体全体にバクテリアと炎症物質は回っていくのです。そして血管そのものにもダメージを与えるのです。もちろん、長い年月をかけて起きる事なので、良く言えばすぐに心臓麻痺や脳梗塞を起こすのでは無いのですが、悪く言えば歯槽膿漏と歯根嚢胞を放っておくといつか心臓麻痺か脳梗塞が起こる可能性を高めます。従って、歯槽膿漏と歯根嚢胞の予防そして早期治療はとても大事なのです。

歯槽膿漏の予防と治療については何回か記事で書いていますが、また書きます。歯と歯茎の間の良い掃除が一番の予防と治療なのです。毎日の歯磨きとフロス、そして歯医者さんでの定期的なクリーニングが一番の予防であり、そして歯医者さんでの必要であれば麻酔をしてでの本当に歯と歯茎の間の奥深くまでのクリーニングが治療です。もちろん、それと共に毎日特別な薬用リンスで口を濯ぐ事も出来ますし、非常に歯茎が侵されている場合には歯茎を切る治療もあります。しかし、基本的に歯と歯茎の間を毎日きれいにしている事が大事なのです。

歯根嚢胞の予防と治療は少し違います。歯根嚢胞は歯の根の先端に起こる化膿です。虫歯が歯の神経まで進行してしまうと神経は炎症を起こし、放っておけば神経は死んでしまい、その個所は腐ってしまいます。そうなると化膿し、この化膿しているところが広がるのが歯根の先端、つまり神経が歯に入っていくところなのです。もちろん、歯を何かにぶつけてしまって歯が歯髄まで割れてしまえば、同じ事が起こります。アクシデントで歯を割ってしまう事は予防は出来得ないところがありますが、虫歯が神経まで達するまで待ってしまう事はもちろん予防できます。虫歯が小さいうちに治せば良いのです。もし、歯の神経が炎症を起こすまでになってしまった場合には根管治療というつまり神経を取り除いてそこを良く掃除し根管に詰め物をするという事ができます。しかし、この根管治療はきちんとしていないと根の先が化膿してしまう事があります。従って、一番の予防はまず虫歯にならないように歯磨きとフロスを良くし、食べ物も気をつける事ですが、それと共にもし虫歯になってしまっても早めに出来るだけ小さいうちに治す事です。歯根嚢胞の治療は根管治療です。もし根管治療があるが不完全で化膿しまっているのであれば、根管治療をやりなおす事が必要になります。

歯槽膿漏も歯根嚢胞もとても悪化してしまうと歯を抜くしか治療方法はありません。従って、口内の事だけ考えても出来るだけ早めに治療をする事は本当にお勧めです。そして、私たちの体は全体が繋がっています。どこかが悪ければ、他の個所にもそのことが影響します。心臓麻痺と脳梗塞は死にまで至ってしまう事ですので、体の健康のためにも口内の健康に気を使ってください。毎日歯磨きとフロスを良くして、また歯医者さんでの定期検診とクリーニングもして下さい。歯槽膿漏、そして虫歯の早期治療も本当にお勧めです。検診、クリーニング、そして治療のためにはお電話下さい。