ウイルスの量 August 2020 オフィスを再開してもう2ヵ月になります。N95マスクやフェイスシールドをする事も普通になってきています。患者さん、スタッフ、そして私も安全であるように防御策を日々取り組んでいます。防御を考えると、この新型コロナウイルスについては、出来るだけ科学的に把握している必要性があります。わからない事はもちろんありますが、わかっている事もいろいろあります。調べている際に、私の母校でもある、University of California San Franciscoの医師の話をオンラインで聞く事が出来、とてもわかりやすかったので、この方が言われた事を今回は紹介します。私が言うのも変ですが、いちおうUCSFは医療に関してはとても優れた医大で、あのiPS細胞で有名な山中教授が研究をしていた所でもあり、インフォメーションは信頼できます。それはそうと、この先生は、コロナウイルスは感染する際のウイルスの量によって、症状の軽さや重さが変わる事を示しています。歯とは関係無いですが、良い知識だと思うので今回はこの感染時のウイルスの量について書きます。 みなさんもご存知のように、このウイルスでの感染は症状が無い人から重症になる人までいろいろな症状を起こします。検査を受けて陽性だった方の40%は、症状が無い方たちだとデータが出しています。症状が無く、検査を受けていない方はたくさんおられるはずですので、実際はもっと感染していて症状が無い方の比率は高いと考えられます。この中で、もうひとつ述べておくべきことがマスクのフィルター能力です。N95マスクは95という数字がついているように、だいたい95%はウイルスをフィルターしてくれます。他のマスクのウイルスに対するフィルター能力は何で作られている、またどう着用しているかによってフィルター力が違いますがだいたい65%から85%はフィルター力があると考えられています。自家製の布マスクもです。つまり大部分のマスクはウイルスの量を減らす事をしてくれます。 ウイルスの量と症状の軽さ、重さに関するデータはいろいろあります。2015年に行われたあるインフルエンザのワクチンの実験では、実際に人にインフルエンザにかかってもらい、ワクチンを投与しています。この研究では、多くインフルエンザウイルスを与えられた人たちは症状が重く、逆に少なくウイルスを与えられた方は症状が軽かったのです。また、最近ではハムスターに新型コロナウイルスを感染させる実験があります。この実験では、マスクを壁のようにバリヤーにしてウイルスに感染するか否かを調べました。バリヤー無しでも感染させました。バリヤーがあると感染は減ったのですが、それでも感染したハムスターはいました。ただ、バリヤーがあって感染したハムスターの症状は、バリヤー無しで感染したハムスターの症状より軽かったのです。ずいぶん昔の1938年に他のウイルスでのネズミを使っての実験があり、この実験でもたくさんのウイルスにさらされたねずみは症状が重く、少なくウイルスにさらされたネズミは症状が軽かったのです。日本でのクルーズ船の船内感染の後にアルゼンチンでクルーズ船の船内感染があったのですが、この時にはわかり次第、船内の方全てにN95マスクが配られました。船内の半分以上の方はテストで陽性になったのですが、その中の81%の方たちは無症状だったのです。簡単に感染する際にウイルスの量が少なければそれだけ症状が軽く、ウイルスの量が多ければそれだけ症状が重くなると考えられます。もちろん、それと共に感染者の健康状態や免疫力も関係します。 マスク着用は、感染している人であれば自分のウイルス放出量を少なくし、また感染してしまうとしても、マスクをしていればさらされるウイルスの量が少なくなるので、とても理にかなっています。しかも感染しても症状が無いか軽いかですみ、免疫もできればとても良いです。ある推測モデルでは、もし全体の80%の方が他人と会う時にマスクをしていれば、このパンデミックはコントロールされた状態になるとしています。重症な方や死者が少なくなるからです。ただ、皆さんも今みているように、アメリカとアジア諸国の差がとてもすごく、変に言えばアメリカはマスク着用をしない事の実験現場になってしまっています。うーん。他人の行動を変える事は難しいですが、一人一人自分がマスクをする事は自らできます。アメリカはどうなることやらとちょっと思ってしまいますが、底力がある国ですので、良い方向に向かう事を願います。日本人の方はマスクを普通にするので、みなさんはグッドです。 先生、歯の事全然書いてないでしょうと思われるかもしれません。そこで、書きます。こういう変な状況の中でも歯の手入れを良くしてください。歯はとても大事です。もちろん、歯医者さんでの定期検診、クリーニングもしてください。定期検診、クリーニング、そして治療のためにはお電話ください。
|